
不動産投資の最大のリスクの一つが「空室リスク」です。どんなに利回りが高くても、入居者がいなければ収益はゼロ。とくに地方や築年数が古い物件は空室が続きやすく、収支が悪化する原因にもなります。今回は、3年間空室に悩んだ築20年のアパートを、たった90日で満室に改善した事例をもとに、具体的な改善策とその背景を詳しく解説します。
【背景】築古アパートに起きた空室問題
相談に来られたのは40代のサラリーマン投資家Aさん。初めて購入した地方都市の木造アパート(1K×6戸)が、購入直後から空室続きに。購入時には4戸が埋まっていたものの、半年後には2戸に減り、1年後にはなんと1戸しか入居者がいないという状態に。家賃収入は激減し、ローン返済が苦しくなっていました。
Aさんが見落としていたのは、
• 物件のターゲット設定の甘さ
• 管理会社への丸投げ体制
• 物件の情報発信不足
でした。これらを一つひとつ改善することで、空室解消へとつながっていったのです。
【施策1】ターゲットを再設定し、ニーズを把握
最初に行ったのは**「どんな人に住んでもらうか」**を明確にすることです。
Aさんは「学生も会社員も住める物件」と考えていましたが、周辺には大学がなく、若者の流入が少ないエリア。実際に周囲の競合物件や人口動態を調査すると、ターゲットは高齢単身者や市内の中小企業の単身社員が適切と判明しました。
そのため、
• バリアフリー化(玄関手すり・段差解消)
• 高齢者向けのサポート案内(近隣医療機関・買物施設)
• 家具・家電付きプランの提供
などを段階的に導入。これにより、これまで対象外だった層からの問合せが増加しました。
【施策2】管理会社を見直して、積極的な募集へ
次に行ったのが管理会社の見直しです。
元の管理会社は大手でしたが、担当者の対応が形式的で募集活動も消極的。Aさんは地元密着型の不動産会社へ切り替えを実施しました。この会社はエリアに特化したノウハウを持ち、独自ネットワークとリアル店舗での募集を行っていました。
また、管理会社との打ち合わせを月1回実施し、以下のようなアクションを定期的に行いました。
• 写真の差し替え・撮り直し
• 周辺相場を基にした家賃見直し(▲3,000円)
• ポータルサイトの掲載順位の調整
結果、内見数が2倍以上に増加。成約率も改善されていきました。
【施策3】物件の“第一印象”を改善
空室が続く原因のひとつに「内見者が現地でガッカリする」ケースがあります。特に外観や共用部の劣化は印象に直結します。
Aさんは以下の小予算リフォームを実施:
• 外壁と共用階段の塗装(約30万円)
• 夜間用のLED照明追加(約5万円)
• 空室部屋のクロスと床の一部貼り替え(1部屋あたり約7万円)
これらにより、写真映えと現地の印象が大幅に改善され、内見後の成約率が急上昇しました。
【結果】90日間で満室達成!
これらの施策を実行した結果、3か月以内にすべての空室が埋まり、家賃収入がフル稼働時の水準に復活。また、高齢者層を中心に長期入居が見込まれる構成となったことで、将来的な安定性も向上しました。
Aさんはその後、同じ地域にもう1棟の中古アパートを購入し、同様のノウハウで成功を続けています。
【まとめ】空室対策は“戦略と行動”の積み重ね
空室は放置すればするほど物件の魅力が下がり、負のスパイラルに陥ります。しかし、ターゲットの見直し・管理会社との連携・第一印象の改善を行うことで、確実に改善の余地があります。
特に大切なのは、「物件を商品」として捉え、入居者の視点に立った運営を行うことです。Aさんのように、データに基づいた改善と、地元業者との協力体制を築くことで、どんな物件でも復活のチャンスはあります。
【こんな方におすすめの改善アプローチ】
• 空室が半年以上続いている方
• 管理会社に任せきりになっている方
• 築古物件のリノベーションに悩んでいる方
不動産投資で安定収益を得るには、**「放置せず、戦略的に動く」**ことが何より重要です。空室問題に悩んでいる方は、まずは小さな一歩から見直してみてください。

不動産業界に25年以上在籍。多くの不動産投資の問題を解決してきた、猫と温泉をこよなく愛する東京在住47歳。