~現場で多発する問題と、事前に防ぐためのポイント~

不動産投資において、「入居者が無事に決まった」「家賃の滞納もなく順調だ」と安心していた矢先、思わぬ形で問題が表面化するのが「退去時のトラブル」です。
「原状回復費用をめぐるトラブル」「敷金返還でもめる」「鍵の返却がない」など、オーナーにとって精神的・金銭的に負担となるケースは少なくありません。
実はこれらのトラブル、賃貸契約の内容と事前説明によって、未然に防ぐことができます。
このコラムでは、不動産投資家が知っておくべき「退去トラブルを避ける契約書の工夫」と、実際に現場で成功した事例を交えながら解説します。
1. 退去時トラブルで多い「3つの典型パターン」
パターン①:原状回復費用でもめる
「クロスの汚れやキズが誰の責任か」で入居者と争いになる例は非常に多く、特に高額請求になるとSNSや口コミで拡散されることも。
パターン②:敷金の返還額で意見が割れる
「思っていたより少ない」「何に使われたのか不明」など、入居者の不信感を生むトラブル。
パターン③:退去の連絡が遅く、空室が長引く
1ヶ月前に通知すべきところ、突然「明日出ます」と言われて空室期間が伸びる、というケースも。
2. トラブルを未然に防ぐ契約内容の5つの工夫
① 国交省ガイドラインに準拠した原状回復条項の明記
国土交通省が発行している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づき、経年劣化や通常損耗を借主に負担させない内容を反映させましょう。
例:
【文章例】
「通常使用による経年劣化部分の原状回復費用は貸主負担とする。ただし、故意・過失による損傷は借主負担とする」
② 敷金の用途と返還時期を明文化
「退去後〇日以内に残額を返還」「敷金の使用内訳を明記する」など、具体的な返還フローを契約書に記載することで、トラブルを未然に防げます。
例:
【文章例】
「敷金は原状回復費用、未払い家賃、清掃費用等に充当できる。精算後、退去日から30日以内に残額を返還する」
③ 契約書とは別に「退去時精算チェックリスト」を作成
鍵の返却、室内の清掃、郵便物の転送、電気ガス水道の停止など、具体的な退去時チェックリストを別紙で渡しておくと、後々のトラブルを軽減できます。
④ 退去予告の期限と通知方法を具体的に設定
口頭だけではなく、書面(メール含む)での通知義務や、最短解約予告期間(例:1ヶ月前)を記載。
例:
【文章例】
「借主は退去の30日前までに書面またはメールにて貸主へ通知するものとする」
⑤ 特約条項の設定は、内容と説明をセットにする
「ハウスクリーニング費用は借主負担」などの特約を設ける場合は、契約前に十分な説明と署名を取得することが重要です。説明が不十分だと、無効と判断される可能性もあります。
3. 実例紹介:退去トラブルがゼロになったオーナーの工夫
都内でワンルームマンションを5室運営しているAさんは、かつて「敷金トラブル」「クロス張り替え費用でもめる」「鍵の未返却」といった問題を何度も経験してきました。
しかし、以下の工夫を取り入れたことで直近5件の退去がすべてスムーズに完了。
• 国交省ガイドラインを反映した契約書に更新
• ハウスクリーニング費用を契約時に明記
• 入居時に「退去時精算ガイドブック」を配布
• 保証会社に退去時立会いを依頼
結果として、入居者からのクレームや確認電話も激減し、空室期間の短縮にもつながったといいます。
4. 管理会社任せでは防げない?契約書チェックの重要性
「契約内容は管理会社が作ってくれるから安心」というオーナー様も多いですが、退去時に困るのは最終的にオーナー自身です。
管理会社が作成するテンプレートが常に最新とは限らないため、オーナー側も契約内容に一度は目を通す習慣を持つことが重要です。
また、最近ではChatGPTなどAIを活用して、契約書の不備チェックや文言改善のアドバイスを受ける方法も注目されています。
5. 退去トラブルは「契約時点」で9割が決まる
トラブルが発生してから対応するのではなく、「契約段階で防ぐ」ことが最大のポイントです。
以下の3つが整っていれば、ほとんどの問題は未然に防げます。
• 国交省ガイドラインに沿った契約内容
• 入居者への丁寧な説明と書面交付
• 特約の根拠と透明性の確保
これらを徹底することで、退去時に慌てることなく、スムーズな明け渡しと空室対策に集中できる環境が整います。
まとめ|「契約内容の工夫」が、将来のトラブルを防ぐ最大の武器
不動産投資は「買って終わり」「貸して安心」ではありません。契約時の書類と説明こそが、収益性とトラブル回避のカギになります。
入居者との信頼関係を保ちながら、将来的なリスクを減らすためにも、契約内容を“攻めの防御”として活用していきましょう。
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不動産業界に25年以上在籍。多くの不動産投資の問題を解決してきた、猫と温泉をこよなく愛する東京在住47歳。