
はじめに
不動産投資は収益性が高く、節税効果も期待できる魅力的なビジネスです。しかし、節税対策を講じているつもりが、税務調査で思わぬ指摘を受け、追徴課税やペナルティにつながるリスクも潜んでいます。特に不動産投資は金額が大きく、取引も多岐にわたるため、税務署の調査対象になりやすいジャンルの一つです。
この記事では、税務署の調査官が着目するポイントを「30個」にわたり網羅的に解説します。これを読むことで、税務リスクを回避し、クリーンで持続可能な投資活動を進めるための備えができます。
税務調査で指摘されやすい30項目
【1】名義と実質が異なる所有関係
妻や子どもの名義で購入しているが、実質的には本人が出資・運用しているケース。
【2】家族に対する給与の水準
労務提供の実態がない家族に不相応な給与を支払っている。
【3】家事費と事業経費の混同
自宅と併用している場合の水道光熱費、通信費の按分が不明確。
【4】リフォーム費用の処理
資本的支出であるのに経費処理している。
【5】取得費の過少計上
仲介手数料や登記費用を計上漏れしている。
【6】減価償却の誤り
耐用年数の選定ミスや、法定償却率の計算間違い。
【7】青色申告の帳簿不備
帳簿が形式だけで内容が伴っていない。帳簿保存期間を守っていない。
【8】過度な節税スキーム
不自然な法人スキームの利用、例えば資産管理法人に過度な費用移転。
【9】家賃の未収分処理
家賃未収の分を売上に含めていない。
【10】敷金・礼金の処理
礼金を収益に含めず敷金と一緒に処理している。
【11】源泉徴収漏れ(外注費)
清掃や修繕業者などへの支払に対して源泉徴収していない。
【12】地代家賃の過少申告
親族間取引で不適切な低額家賃設定。
【13】外注費と給与の線引き不備
形式上は業務委託でも、実態は雇用とみなされるリスク。
【14】空室対策費の内容
広告費や手数料に不透明な支出が含まれている。
【15】接待交際費の用途不明瞭
誰とどのような目的で使ったのか記録が不十分。
【16】車両費のプライベート利用
家族の移動にも使用しているのに全額経費にしている。
【17】保険料の経費化
個人保険を不動産経営に関係なく経費処理している。
【18】土地と建物の価格配分
建物部分を不自然に高くして減価償却を過大にしている。
【19】退去修繕費の内容不備
原状回復なのかバリューアップなのかが曖昧。
【20】固定資産税の納税管理不備
納税通知書と申告書の整合性が取れていない。
【21】借入金の利息処理
プライベートの借入を事業用と混同して利息処理。
【22】消費税の簡易課税制度の誤用
課税売上割合が正確に把握されていない。
【23】共有名義物件の損益配分ミス
配偶者との共有割合に基づく損益計上がされていない。
【24】譲渡所得の申告漏れ
不動産売却時の取得費計算や経費の記録不備。
【25】不動産所得の赤字計上理由
赤字なのに不自然な支出が目立つ場合に調査対象になりやすい。
【26】物件取得資金の出所不明
購入資金の流れが明確でないとマネーロンダリングを疑われる。
【27】家賃の現金受け渡し
現金収入が帳簿に反映されていない。
【28】事業開始前の支出
取得前の出張費や調査費用の扱いが誤っている。
【29】贈与税の課税逃れ
親族名義で購入したが、資金提供者は本人であるケース。
【30】税理士との意思疎通ミス
申告内容を税理士に丸投げして内容を把握していない。
まとめ:日頃の記録と透明性がカギ
税務調査は「悪意がないミス」も対象になります。調査官はプロです。帳簿のつじつま、実態と異なる処理、金額の不自然さを見抜く眼力を持っています。だからこそ、日常的に「正しい処理」「明確な記録」「税理士との連携」が何よりも重要です。
不動産投資の節税は、やり方次第で大きな利益をもたらしますが、それが裏目に出て税務リスクを生むのは本末転倒。今回紹介した30項目は、どれも実際に指摘されやすい「落とし穴」です。自社またはご自身の投資内容と照らし合わせ、抜け漏れがないかチェックをしてみてください。

不動産業界に25年以上在籍。多くの不動産投資の問題を解決してきた、猫と温泉をこよなく愛する東京在住47歳。