
「利回り10%」の甘いワナ
「高利回り物件を買えば、儲かると思っていた——」
これは、不動産投資を始めたばかりの多くの人が直面する典型的な失敗です。特に「表面利回り○%!」という広告文に惹かれて購入を決断してしまうと、購入後に“収益が思ったより少ない”という現実に直面することになります。
今回は、実際にあった失敗事例とともに、表面利回りと実質利回りの違い、購入前にチェックすべきポイントを詳しく解説します。
1. 【実例】「利回り10.2%」の中古アパートを買ったAさんの後悔
■ Aさんの投資プロフィール
• 年齢:37歳/会社員(年収800万円)
• 初めての不動産投資で中古木造アパートを購入
• 地方都市/築25年/2DK × 6戸/販売価格3,000万円
• 表面利回り10.2% → 年間家賃収入306万円
Aさんは、「銀行から融資も引けたし、月25万円の家賃が入るなら、キャッシュフローも問題ないだろう」と判断。現地視察もそこそこに、営業マンの「満室ならこれだけ儲かりますよ!」という説明に乗って契約しました。
2. 実態は「空室2戸」「年間家賃250万円」「修繕費60万円」
物件引き渡しから半年後、Aさんは現実の厳しさに直面します。
• 入居者の1人が退去 → 原状回復に20万円
• 2部屋空室が埋まらない → 年間家賃収入は約250万円
• 雨漏りによる修繕費 → 40万円の持ち出し
• 管理会社手数料・火災保険・税金など固定費 → 年間50万円
結果として、年間手残りキャッシュフローはわずか数万円に。
表面利回り10%超のはずが、実質のネット利回りは4%台にとどまり、「こんなはずじゃなかった…」と後悔することに。
3. 表面利回りと実質利回りの違いとは?
■ 表面利回り(グロス利回り)
表面利回り=年間家賃収入÷購入価格×100表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 購入価格 × 100表面利回り=年間家賃収入÷購入価格×100
→ 管理費・税金・空室リスクなど一切考慮しない数字。広告に多く使われる。
■ 実質利回り(ネット利回り)
実質利回り=(年間家賃収入−年間支出)÷総投資額×100実質利回り = (年間家賃収入 − 年間支出) ÷ 総投資額 × 100実質利回り=(年間家賃収入−年間支出)÷総投資額×100
→ 実際の手取りに近い収益性を示す。支出項目には以下が含まれます:
• 固定資産税・都市計画税
• 管理会社への手数料(通常は賃料の5〜7%)
• 修繕積立または実費
• 空室期間を考慮した稼働率
• 火災保険、損害保険
つまり、「見た目の利回り」だけでなく、実際に残る収入を見極めることが投資判断には必須です。
4. 「想定家賃」がウソだった?営業トークの落とし穴
Aさんが購入した物件では、営業担当者が次のような説明をしていました。
• 「利回りは10%超えで優良物件です」
• 「全戸入居中です(ただし、入居者の入れ替わり時期)」
• 「今後の家賃下落リスクはほぼありません」
しかし実態は、
• 2部屋は短期入居の外国人技能実習生(退去確定済み)
• 家賃は周辺相場より高く設定されていた(=空室リスクが高い)
• 古い木造アパートで修繕コストが高騰傾向
つまり、「想定利回り」が現実的でなかったのです。
5. 事前にチェックすべき「5つのポイント」
チェック項目 | 内容 |
---|---|
稼働率 | 現在の入居率ではなく「過去3年の平均入居率」を確認 |
家賃相場 | 周辺の同じ間取り・築年数の家賃と比較 |
維持管理コスト | 修繕履歴・今後の修繕計画があるか |
実質利回り | 管理費・税金・保険料・空室率込みの収支シミュレーション |
退去リスク | 入居者の属性、年齢、契約内容などの確認 |
6. 失敗から学ぶ「改善策」とは?
Aさんはその後、専門家に依頼して以下の改善策を実行しました。
• 家賃を相場に合わせて見直し → 空室を2か月で埋める
• 修繕コストを見直し → 定期メンテナンス計画を策定
• 管理会社を変更 → 賃貸管理・クレーム対応の品質が向上
• 次の物件からは実質利回りベースで収支シミュレーション
これにより、翌年度からは安定したキャッシュフロー(月10万円)を確保することに成功。
7. まとめ|「実質収益」で投資判断を
高利回りを謳う広告は目を引きますが、不動産投資において最も重要なのは**「実際に残るお金」**です。表面利回りはあくまで目安。空室や修繕が発生した途端、収支は大きく変動します。
「表面利回り10%」の物件でも、実質は赤字になることもある。
この現実を知っておくことが、将来の大きな損失を防ぐ第一歩です。
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不動産業界に25年以上在籍。多くの不動産投資の問題を解決してきた、猫と温泉をこよなく愛する東京在住47歳。